BABY BROKER

是枝裕和監督の新作「ベイビーブローカー」
さっそく観てまいりました。
「誰も知らない」以来大ファンの是枝作品。
ああ、今回も間違いなかった!

乳児の売買というヘビーなテーマに切り込み
ながらも、くすっと笑える場面も散りばめ、
見終わった後には、じ〜んわり温もりが残る。
問題提起を含む内容でありながら、
物語の着地点がとにかく優しい。あったかい。
これぞ是枝ワールド。

描く人の目線が優しいのだなぁ。

お人柄もそのまんまです。

今作、刑事役で登場したぺ・ドゥナさん。
どこかで見たことあるなと思っていたら、
「空気人形」の人でしたか!
是枝監督の2009年公開作品。
一気に記憶が蘇りました。写真はその際、
番組にお越しいただいた時のものです。

このぺ・ドゥナさんをはじめ、
今作でカンヌ国際映画祭・最優秀男優賞を
受賞したソン・ガンホさんは言うまでもなく、
その他キャストの皆さんも素晴らしかったです。
個人的には特に母役のムン・ソヨンさんに
惹かれました。揺れ動く心の描写が
表情ひとつで伝わってきました。

「優れた俳優は、言葉にしなくても
僕が何を求めているかを理解している」と
監督はおっしゃっていますが、
演技とは思えない演技を引き出すのも
監督のならではの手腕。韓国語であろうと、
何語であろうと、全く違和感なく、
自然体の演技が映画の中であることを
忘れさせてくれました。
心を描くのに言葉は関係ないのだなと
改めて感じる次第。

子役に対する演出もこれまで通り、是枝流。
台本、渡してません。
是枝作品に登場する子役たちは、
「誰も知らない」の柳楽 優弥くんを筆頭に
みな自然すぎて怖いくらいの吸引力。
我が子のホームビデオを見てるかのような
普通の景色。普通の言動。いたって日常。
これまた是枝作品の魅力のひとつですね。

疑似家族を描くのは、「そして父になる」や
「万引き家族」からの流れでしょうか。
ベイビーブローカーを中心に織りなす人間模様。
やがてそこに芽生える「絆」の物語。
やはり今、「絆」を描かせたら、
是枝監督の右に出る者はおらんでしょう。
血の繋がりがあってもなくても、
大切にしたい「絆」に心が震えます。