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魚上氷
湖や川などの水面に張っていた氷が割れ、魚が跳ね上がるころ
まだうっすらと氷が張ってはいる川や湖の水中では、ゆらゆら泳ぐ魚たちの姿が見え始めます。吹く風も柔らかくなり、水もぬるんでくると、冬の間水底でじっと身を沈めていた魚たちは、水面に陽光を感じ、様子を伺いに上がってきます。いち早く春の訪れを感じた魚たちの喜ぶ姿が目に浮かびます。さすがに魚が自ら水面に飛び上がってくるシーンにはなかなか出会えませんが、魚にせよ、水鳥にせよ、木々の新芽にせよ、万物の活動がやや活発になってきたようには感じます。

2月からは徐々に各地で渓流釣りが解禁となりますよね。近所の池でもカモたちが頻繁に水の中に顔を突っ込んでいます。春先のこの時期によく見られる薄く張った氷や解け残った氷は「薄氷 (うすらい)」と呼ばれ、春の季語にもなっています。子供の頃、水たまりに張った薄い氷を靴底でパリンパリンと割って遊んだことを思い出します。「うすらい」が割れる感触って、なんだか気持ちよかった。例えるなら、チョココーティングのアイスをかじる時のような、ブリュレの表面のキャラメリゼをスプーンで割る時のような、あのパリパリ感にも似た心地よさ。そういえば、大人になると水たまりはすっかり避けるものとなってしまいました。もし今度「うすらい」に出会ったら、慎重に近づいて、踏みしめてみようかしら。あのワクワク感が蘇ってくるかしら。

薄氷といえば、富山の銘菓に「薄氷(うすごおり)」という和三盆のお菓子があります。こちらは、北陸の深い雪が溶け始める頃、田んぼの上にうっすらとできる薄氷を模し、薄焼のせんべいに、和三盆糖を刷毛塗りして作られたお菓子。名前の通り、薄氷のように薄く、一口かじると和三盆のやさしい甘みが口の中に広がり、スーッと心地よく溶けていくそうです。ぜひ一度、食感としての「うすらい」も味わってみたいものです。

さあ、目には見えずとも、すぐそこまできている春のいぶきが感じられる季節の到来です。魚たちが解け始めた氷の表面に踊り上がる頃、私たちもそろそろ春への準備運動を始めましょうか。
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