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蟋蟀在戸
コオロギなど秋の虫の鳴き声が戸口で聞こえる頃
ここでキリギリスという字にあてがわれている難しい漢字は、辞書で引くと「こおろぎ」と出てきます。なんでも昔は「蟋蟀」=コオロギのことをキリギリスと呼び、秋に鳴く虫の総称でもあったらしい。ああ、ややこしや。ともかく、戸口にやってくるという事は、野山にいた虫たちも秋が深まるにつれて人恋しくなってきたのかな。
 
キリギリスといえば、現代ではイソップ童話「アリとキリギリス」でもおなじみの、あの虫。がしかし、その姿は・・・パッと思い浮かびますか?バッタによく似ていると言うことですが、多分草むらで出会っても私は区別がつかないかも。
スラリと細長い美脚の持ち主であるが肉食系で、鳴き方はギー・チョン・ギー・チョン。どこか機織りの音のようにも聞こえますよね。先ほど昔は「コオロギ」のことを「キリギリス」と呼んでいたといいましたが、じゃあ、「キリギリス」は何て呼ばれていたのかと言うと、ずばり「ハタオリ」。やっぱり、鳴き声からのネーミングなんですね。
鈴虫はリンリンと鳴くから鈴虫、クツワムシは、馬の口にはませる道具「くつわ」がガチャガチャ鳴る音と鳴き声が似ていることからクツワムシ。じゃあ、かつてキリギリスと呼ばれていたコオロギの鳴き声は?
童謡「虫の声」では「きりきり きりきり」という鳴き声になっている。ほら、だからキリギリスと呼ばれたんだ。もうキリギリスのまんまでよかったのでは?そして、キリギリスも元の名前のまま「ハタオリ」でよかったのでは?と思ってしまいました。
 
昔の人は夕暮れ時になると、野山に出かけて「虫聞き」をしたそうです。これは諸外国にはみられない日本独特の文化。
平安時代に始まったとされるこの風流な文化は、虫の声を聞きながら酒宴を催し、楽しむというもの。これがやがて庶民の間にも広まり、江戸時代には秋の虫をカゴに入れて売り歩く「虫売り」という商売も成り立つほどに。虫の鳴き声がビジネスになるとは!これもやはり日本人の感性を通してでしか起こり得ない社会現象でしょうね。
 
さあ、晩秋が深まるにつれ、虫たちの声もだんだんか細くなっていきますが、昔の人がお金を出してでも得たいと思った虫の鳴き声に、今年もじっくり耳を傾けて、できれば鳴き声でその名を当ててみることにも挑戦してみたいと思います。
 
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