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半夏生
半夏が生え始める頃
「半夏(はんげ)」とはサトイモ科の薬草「烏柄杓 (からすびしゃく)」の別名で、夏の半ばに花が咲くことからこの名前がつきました。ちなみに、ちょっと紛らわしいのですが、半夏とは別に「半夏生(はんげしょう)」という植物も存在します。ごく最近までわたくし、七十二候の「半夏生」は、この半夏生のことを指しているとばかり思っていました。半夏生は半夏と同じ頃に花を咲かせますが、こちらはドクダミ科。花の咲く時期だけ葉の上部が半分、おしろいを塗ったように真っ白に変わるので、はんげしょう(半化粧→半夏生)。一方、半夏=烏柄杓 (からすびしゃく)は、実にユニークな形をしています。緑色の仏炎苞(ぶつえんほう)に包まれた細長い袋のようなのが花。そこからまるで鶴の首のように美しい曲線を描いて伸びるのが、肉穂花序(にくすいかじょ)。別名「狐のろうそく」、「蛇の枕」とも呼ばれています。ほんとうだ。細長いロウソクみたいですね。ちなみに仏炎苞は、花を守るために葉が変化したものだそうで、仏像の光背に見立てて名付けられました。ミズバショウと同じですね。

しかし、不思議な出で立ちとはいえ、鮮やかな花を咲かせるわけでもないこの地味な半夏が、なぜ七十二候に選ばれたのでしょうか。調べてみると・・・やはり生薬でしたか!カラスビシャクの球根には、吐き気を鎮め、痰切り、鼻炎、食欲不振、消化不良などの改善に有効な薬用成分が含まれており、「半夏(はんげ)」の生薬名で知られていると。薬草として売れるため、農家の女性たちは根を掘ってお小遣い稼ぎしていたようですよ。よって、カラスビシャクを「ヘソクリ」と呼ぶ地域もあるとか。ただし、全草に多数の毒を含んでいるので要注意。また、繁殖力が旺盛なので、畑などでは駆除が困難な雑草として扱われ、嫌われ者の一面も。まあ、良くも悪くも人々の生活に密着した植物だったわけですね。また、半夏という毒草が生えるこの時期は梅雨も末期。多湿で天候も不順なので、気をつけましょうという注意喚起の意もあったようです。半夏生の日は天から毒気が降るといわれ、井戸に蓋をして毒気を防いだり、井戸水を飲んではいけない、この日に採った野菜は食べてはいけない等の言い伝えがありました。農作業も田植えはこの日までに済ませるのがよし。この頃に降る雨は大雨になることが多く、洪水を起こす大雨は半夏水(はんげみず)と呼ばれ、警戒されてきました。地方によっては、この時期ハンゲという妖怪が徘徊するという言い伝えも。カラスビシャクの開花はそういった災難への戒め、気をつけてね!のサインだったのかもしれません。

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