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腐草為螢
蛍が明りを灯しながら飛び交う頃
夜の闇に浮かんでは消える幻想的な蛍の光は、まさに夏の風物詩。閑雅な光景ですね。“腐れたる草が蛍となる“・・・古くは、暑さに蒸れて腐った草や竹の根が蛍になると信じられていました。蛍は土の中でサナギになった後、羽化して枯れ草の下から出てきます。そうしたことから昔の人は、朽ちた草が蛍に生まれ変わると思ったようです。

国内に生息するホタルは50種近くいますが、お腹の部分に発光器をもっているのは、わずか数種類だけ。びっくりです。光らないタイプの蛍の方が圧倒的に多いのですね。そんな中、人気のゲンジボタルとヘイケボタルは、卵から成虫まで生涯ずっと光っているエキスパート。ギフテッド蛍なのです!

ゲンジボタルの名前の由来は、紫式部が書いた「源氏物語」の主役「光源氏」から。とする説と、平家との争いに敗れた源頼政の魂が空を舞ったものだ。とする二つの説があります。ヘイケボタルは「源氏」との対比で命名。あるいは、この二種の蛍がちょうど同時期に飛び交う様から「源平合戦」に見立て、源氏が勝利した歴史的背景により、体の大きい方を「源氏」、相対する方を「平家」と呼んだ。などの説があります。なるほど、交尾のために多くの蛍が入り乱れ飛ぶことを「蛍合戦」といいますよね。この場合、内乱ではなく恋人争奪戦ですが。

暗闇の中を飛び回っているのはほとんどがオスで、飛び回りながらお相手探し。メスはだいたい草の茎や葉っぱに止まって弱い光を発しながらオスを引き寄せ、引き寄せられたオスは強い光でプロポーズ。メスもそれに答えて愛し合うのだそうです。蛍が成虫として生きられるのはわずか1、2週間。その間は水しか飲まず、短い命を燃やしながら舞い飛び、次世代へとバトンをつなぐため、パートーナーを探します。

「恋に焦がれて鳴く蝉よりも、鳴かぬ蛍が身を焦がす」―山家鳥虫歌

そう、螢火はラブコール。静かに愛を確かめ合うプライベートシーンを覗かせてもらっているわけですから、蛍狩りなどのときは、できる限り恋のじゃまをしないようにしたいですね。
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