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螳螂生
カマキリが卵からかえる頃
生き物の赤ちゃんは皆かわいいですが、虫の中ではカマキリのBabyがピカイチではないでしょうか。透き通るような初々しいBodyは、お父さんお母さんそっくりで、小さいのに一人前に鎌をかまえたりするのも微笑ましい。スポンジ状の卵一個からは数百匹も生まれるのに、そこから生き延びるのはたったの2、3匹というのですから、とても貴重な子供時代です。小さい頃はアリにも食べられてしまうほど、か弱いカマキリですが、成長するにつれ大きな獲物を
捕獲するようになり、やがて肉食昆虫トップ5の座にまで上り詰めます。

トレードマークともいえる鎌で切るから「鎌切り=カマキリ」となったとも言われますが、鎌を持ち上げ威嚇する姿が、どこか祈っているようにも見えることから、「祈り虫」や「拝み虫」とも呼ばれています。英語では「mantis」。その語源はギリシャ語で「予言者」や「僧侶」という意味。たとえばヨーロッパ南部では、迷子の子はカマキリが家の方向を指し示してくれるという言い伝えがあったり、イスラム教の人々の間ではカマキリはいつもメッカの方角を向いて祈っていると考えられていました。肉食や共食いなど故の、獰猛なイメージとはちょっと違いますね。実際のところ、カマキリは害虫を駆除してくれるので、畑や菜園においては益虫とみなされています。見た目はこわいけど、案外いいやつかも。

カマキリは中国故事の由来にもなっています。力の無い者が自分の実力を顧みず、強い者に立ち向かうことの例えを「蟷螂の斧」といいますが、この「蟷螂(とうろう)」というのはカマキリのこと。中国・春秋時代のある日、斉(せい)という国の君主、荘公(そうこう)が馬車で出かけたところ、道の真ん中にいた一匹のカマキリが、逃げ出さずに前足を振り上げ馬車に向かってきたそうです。それを見た荘公は、そのカマキリの勇気を称え、車の向きを変えさせ、よけて通ったといわれています。この勇気あるカマキリの様子が、時代の変遷と共に転じて、「蟷螂の斧」は“己の無力を知らない無謀な様子”を表現する言葉になりました。無謀ではあるけれど、弱者が強者に立ちむかう姿はあっぱれですよね。カマキリファンになりそう。ちなみに夏の京都を彩る祇園祭のハイライト、山鉾巡行に登場する「蟷螂山(とうろうやま)」は、この「「蟷螂の斧」の故事を元にした山で、巡行の際は山の上に乗ったカラクリ仕掛けのカマキリが羽を広げ、首や斧を動かします。数ある山や鉾のなかでも、こんな仕掛けが施されているのは「蟷螂山」のみ。愛嬌ある動きが巡行でも大人気です。

さあ、そうこうするうちに今年の祇園祭も、そう遠い先ではなくなってきました。
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