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紅花栄
紅花が盛んに咲く頃
紅花(べにばな)はキク科・ベニバナ属の植物。原産はエジプトで、日本にはシルクロードを通って飛鳥時代に伝わり、その後、近畿地方を中心に全国に広まっていきました。古代エジプトではミイラを包む布を紅花で染め、防虫や防腐に役立てていたそうです。紅花の黄色い色素、サフロールイエローは、防虫防腐効果があり、紅花から抽出される赤い色素、紅(べに)は、日本では魔除の色、高貴な色とされ、とても貴重なものでした。

化学染料のない時代ですから、花弁から美しい紅色を作り出すのも大変な作業です。紅花はアザミによく似て棘もあるので、朝露を含んだ、棘がまだ柔らかい早朝に、ひとつひとつ丁寧に花びらだけを摘んでいきます。まずは水溶性の黄色の色素を水で何度も洗って流し取り去ってから、水に溶けない赤い色素を麻布などに吸着させます。そして今度は、弱アルカリ性の液体の中で洗って、そこへ梅酢などの酸を入れて中和。そうすると紅い色素だけが沈殿します。あとは、上澄みを捨てて乾燥させると純粋な紅が取れるという塩梅。こんなに苦労しても、取り出せる紅の量は1㎏の花からたった3~5g程度。そりゃあ貴重ですね!!幕末当時の紅の価値は、米の百倍、金の十倍だったとか。同様、紅から作られる口紅も大変高価なもので、ごく一部の裕福な人々しか使用できませんでした。花摘みをする農家の娘たちとは無縁のものだったようです。

かつては米よりも金よりも高価な「色」を生み出した紅花。実際に花が咲き始めるのはもう少し先の6月末から9月ごろにかけて。咲き始めの頃は鮮やかな黄色ですが、成長するにしたがって徐々に赤色が増していきます。その頃には京都はちょうど「祇園祭り」。紅花と共に、京の街が一年で最も栄(さかう)季節ですね。
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