We propose healing and learning to make your life a little more colorful
蚕起食桑
孵化した蚕が桑を食べるころ
二十四節気は「小満」 
自然界の生命力が満ち満ちてくるころ。

清々しい五月晴れも、愚図つく五月雨も、命を育む天からの大切な贈り物ですね。そんな万物の成長著しい時期、ちょうど桑の新芽が伸び始める頃に合わせて、
桑の葉を餌とする蚕(かいこ)を孵化させるのだそうです。蚕は「カイコガ」という蛾の幼虫。語源は「飼い蚕(こ)」。何千年もの間、人間に飼われ続けてきたので、成虫になり羽を持っても飛べず、自分の力では生きていけなくなってしまいました。家畜化された鶏と同じですね。その運命を思うと、少し胸が痛みます。

蚕が桑の葉を食べる時の音を「蚕時雨(こしぐれ)」というそうです。聞いたことがないので、さっそくYoutubeで検索してみると、わーい、本当だ!
小雨が降っているような、サーッという心地よい音。食欲旺盛な蚕は、眠ることなく大量の桑の葉を猛然と食べ続け、ひと月ほど後には白い糸を体の周りに吐き出しながら、繭(まゆ)をつむぎます。この繭から美しい絹糸が生まれるのですね。品質のよい「ジャパンシルク」は高値で取り引きされ、世界市場の6割を占めていた時代もありました。養蚕は、戦前までは農家の約4割が携わっていたほど、かつての日本の主要な産業でした。

蚕は「お蚕様」と呼ばれ、牛や馬など大切な家畜と同様「一匹」ではなく「一頭、二頭」と数えます。そんなお蚕様の食す桑も大事な存在。その証拠に、桑畑は果樹園や畑地のように独立した地図記号になっていましたよね。Y字の右下に横棒一本、尾っぽがついたようなやつ。ただ今では養蚕業も衰退し、桑畑も減少。平成25年、2万5千分の1地形図図式において、桑畑の地図記号は廃止となったようです。

5000年も前から人間のために、「絹」という類い稀な繊維を提供し続けてくれた「お蚕様」。近年では、真っ白でモフモフ、天使のような出で立ちの成虫が人気。ペットとして飼う人もいらっしゃるようです。
Ikukology
TOPへ