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蟄虫啓戸
地中で冬ごもりをしていた生きものたちが春の陽気を感じ、姿を現し始める頃
二十四節気は「雨水」から「啓蟄(けいちつ)」へと変わりました。

「蟄虫啓戸」。土から出るとは言わずに「戸をひらく」と擬人化するところに、先人達の生き物に対するやさしい眼差しを感じますね。昔は小さな生き物をすべて「虫」と呼んでいたので、この虫たちの中にはヘビやカエル、トカゲなども含まれます。虫たちが戸を開いて出てくると、それを捕食する小動物たちも冬眠から目覚め動き出すという具合に、自然界の歩みは季節の変化に連動。みんなみんな、繋がっているのだな。将来、昆虫食がポピュラーになると我々人間も「蟄虫啓戸」の頃には美味しい獲物に期待してワクワクするようになるのかしら。

昔の人は、この時期に鳴る雷のことを「虫出し雷」、略して「虫出し」などと呼んでいました。雷の音に驚いて虫たちが這い出してくると考えられたのですね。この考えは、あながち的外れでもなさそうです。なんでも、地下で眠る虫達は、地中音と呼ばれる振動によって目覚めるらしく、この振動音は3月に入ると突然大きくなるそうです。地中音は、冬ごもりしていた虫達にとっては、けたたましく鳴り響く目覚まし時計に相当する大音量らしですよ。ちょっとお気の毒。だって、「啓蟄(けいちつ)」の「蟄」という字をよ~く見ると、「幸せ」に「丸くなる」「虫」。そんな夢心地の状態からいきなり起こされるのですもの。私たちと同じく、寒い日の朝は「もうちょっと寝かせて~」といった悲痛な叫びが聞こえてきそう。いや、待てよ。春という字の下に虫が二匹で、「蠢く (うごめく)」。意外と目覚めすっきり、しゃっきりで、活動開始かもしれませんね。

雨水を経てひと雨ごとに気温も上がり、近頃は朝起きるのもずいぶん楽になりました。日差しも心地よく、気持ちも開放的になる季節。私たち人間も心の戸を開いて、暖かい日は、目覚めた虫たちといっしょに戸外でひなたぼっこするのもいいかもしれません。
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