稲などの穀物が実り始める頃
「禾乃登」の「禾」は稲穂が垂れることを表した象形文字で、稲ばかりでなく、麦、稗、粟など、穀物を総称した言葉となっています。 いよいよ実りの季節ですね。田んぼの稲穂も日に日にこぼれるように実り、重く頭を垂れ、まるでお辞儀をしているかのよう。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」
成果が表れるそんな時こそ謙虚な気持ちを忘れずに~という教訓を、収穫間近の稲穂が体現してくれています。
棚田が黄金色に染まり、稲が風に揺られて波立つ様はなんとも美しい光景ですが、刈り入れを間近に控えたこの時期は台風の襲来と重なることも多く、農家の人たちはハラハラ。各地で風をおさめ、豊作を祈る風鎮祭が行われます。日々お世話になっているお米です。どうか無事収穫できますようにと、こちらもついつい頭を垂れて祈りたくなります。
さて、田んぼと非常に密接な生き物に、トンボがいます。田んぼで生まれて、田んぼで飛ぶから「飛ぶ田んぼ」→トンボ。夏にも見かけますが、やはり秋の風物詩には欠かせない一員。古名は「秋津(あきつ)」。昔から秋の虫として代表的な昆虫でした。ちなみに日本・本州の古名は「秋津洲(あきつしま)」。トンボが国を象徴する時代もあったのですね。欧米ではトンボは「悪魔の縫い針」などと呼ばれ、気味悪がられたそうですが、日本では亡くなった人の魂やその生まれ変わり、また神や仏の遣いであると信じられており、縁起のいい虫として好かれてきました。これからも仲良くしてね、トンボさん。
稲の黄金風景と、夕暮れの空を乱舞するトンボの姿。そんな秋の風情が郷愁を誘うのは、それらが何千年も前から繰り返されてきたこの国の原風景だからなのかもしれません。